「謙也って何なの?頭おかしいんじゃないの」
「随分ご立腹やな・・・」
「誰が奴の消しゴム取るかっつーーの!!ねぇ!?白石!」
「まぁな。どうせその辺の床に落ちとるやろ」







只今、絶好調最高潮に腹が立っています。だって濡れ衣着せられたんだよ・・・!!
数分前の出来事。わたしは謙也に見たくもない消しゴムを見せ付けられる。(自慢げに)
どうやら新しく買ったみたいです。抹茶のシュークリーム消しゴム。


「なぁ!!!」
「なに?」
「さっきお前に見せた抹茶シューなくなってん!!俺の筆箱見てみ!」
「あー・・・ないね。」
「お前取ったやろ!ほんま信じられん!!」
「アホか!誰がそんなのいるか!!」


それから少し言い合いになり、見かねた白石が来てくれてその場を宥めてくれた。
こんなのは日常茶飯事だけど・・・今回ので頭にきた・・・!!

もう謙也と一生口きかない!!!


「抹茶シュー見つかって謝っても許してやんない」
「・・・そこは許したりーや。謙也の性格分かるやろ?ああいう奴やねん」
「だって疑われたんだよ!?有り得なくない?」
「まぁまぁ、俺が帰りに本物の抹茶シュー奢ったるから機嫌直して?な?」
「わーい!白石大好きー!」
「こういうときだけ調子ええな」


帰りのHR、抹茶シューにウキウキしてる私を謙也はずーっと睨んでいた。
気分悪くなるわ!こっち見んな!!テニスボール顔面に当たれ!


「はい、じゃー最後に先生から!」
「はよ帰らせてや先生ー!!」
「教室の端っこに変なちっこいシュークリーム落ちとったで。これ謙也のと違うかー?」
「わ!俺のや!!!!」
「先生間違えて食うとこやったんやで」
「いや、汚いやろ!」


教室のみんなが笑う中、私はただ一人真顔だった自信がある。
申し訳なさそうな、ヘラヘラした顔で謙也はわたしの目の前まできた。


「あー・・・・・・」
「白石!早く行こう。」
「ええの?謙也。何か言いたそうやったけど」
「知らん!」


白石を引っ張る形で小走りに学校を出た。・・・さすがに可哀想だったかな・・・。
でも、謙也に疑われたことに対して腹が立ったしそれ以上に何より哀しかった。


「そない顔して食べられても奢ったかいないわ」
「え?どんな顔してた?この抹茶シューすごい美味しいよ」
「・・・そいえば髪、伸びたな」
「しばらく切ってないもんなー。前髪とか目にかかってウザイんだよね」
「俺伸びんの遅いねんけど」


クラスの子の話とか、誰と誰が付き合ったとか、そんな話をしながら白石は家まで送ってくれた。


ー!早くお風呂入っちゃってよー!」
「今入るってば!」


あ・・・そうだ、前髪切ろうかなぁ。
いつもは美容室に行ってるけど、そんな暇なさそうだしな・・・。


「お母さーん!はさみどこー!?髪切るんだけど!」
「前髪?その辺のやつ使ってよー。今手離せないの」


そう言ってドラマ見てるし。・・・いいや。
その辺にあったハサミを使ってジャキジャキ切っていったけど・・・。
美容師さんみたくうまくいったかも!!やばい!バランスも完璧じゃん!


「あら、可愛くなったわね」
「凄くない!?これ自分で切ったんだよー!」


明日の学校、楽しみかも!
今日は気分が下がったり上がったり大変な1日だったな。すべては謙也のせいだけど。


「おはよー!」
「おはよう!あのね・・・」
「ねぇ!真理子パーマかけたんやて!!すごない!?」
「わっ可愛い!!」


教室では真理子ちゃんのパーマで話題は持ちきりだった。いいな、パーマ。
すごく似合ってるな、真理子ちゃんのパーマ。わたしの前髪に比べたら・・・。


「なんやそれ」
「・・・謙也。何?いつも通りだけど。」
「髪、切ったやろ」


あ。きっと謙也だけが気づいてくれた。わたしの小さな変化に。
顔を真っ赤にして差し出した手の上に乗ってたのは抹茶シュー。


誰にも聞こえないような小さな声で「ほんまにごめん・・・」と呟いた。


すごく笑いそうになったけど、謙也はめちゃくちゃ真剣な顔をしてるんだ。
あぁ、この人が愛しいなと思った瞬間。


「俺も抹茶シュー誘ってや・・・」
「じゃあ・・・部活オフの日行こっか」


謙也の顔がパァと明るくなる。結局いつも許してしまう。
そうか、わたし謙也のことが好きなんだ。こんな簡単なことに気づいた今日。

次のテニス部のオフが気になってしょうがない。










(20130317)白石「俺はの前髪にすぐ気づいたで!言わへんかったけど」