「お前女子として終わってんねん」


幼馴染、一氏ユウジに女子として終わってる宣言をされてしまった。
だって仕方ないやん。ユウジがうちに来るんやったらもう少しマシな格好で待ってたわ。不意打ちで私の部屋訪問すんなや。


「いや、予告しといたとしてもその格好やったろ。ていうか予告しとった。」
「しゃーないやん。春休みやし」


私の今の格好というと・・・ジャージ、Tシャツ、ノーメイク、ノーブラ・・・自分で言っといて悲しくなってきたのでやめた。
ほんでベッドの上には漫画が散乱しとる状態。部屋はユウジいわく「泥棒入ったんかコレ」らしい。


「ほんまや。泥棒の仕業やんこれ」
「お前やろ」
「ていうかユウジなんでうち来たん?随分オシャレな格好しとるけど」
「は!?お前約束忘れたんか!!?」
「へ?」
「この映画見たい!!!って馬鹿騒ぎしてたんどこのどいつや!死なすど!
「・・・あ。」「あ。ちゃうわ!アホ!!」


すっかり忘れてた。ていうか覚えてたユウジすご。まだ春休み前に騒いどったやつやんけ。
ユウジは拗ねて私のベッドの上に散乱してる少年漫画を読み始めた。「女子が何でこんなん読むねん」とぶつぶつ言っとる。お前の女子の定義は何やねん。



「ちょお、今から準備するから待っとって」
「おん」


クローゼットの中から服を選ぼうとする。
するとさっきまで漫画を読んでたユウジがこっちにきた。


「これとこれと・・・あとこれやな」
「なんでユウジが決めんねん」
「ええやん。ええやん。はよ着ろやボケ」
「一言多いっちゅーねん」


私が一昨日くらいに買った新しい春物スカートをユウジがチョイス。
まぁ・・・さすがオシャレやな。ボロクソ穴あいとるジャージを脱ごうとおろした瞬間、ユウジが勢いよく脱ぎかけたジャージを元に戻した。


「何ここで脱いでんねん!!!!ビビったわ!ホンマ!!!」
私のがビビったわ!どんだけ反射神経ええねん!!」
「俺男やぞ!!?何で目の前で脱ぐねん!」
「私も相手考えてるわ!もしここに白石クンおったら脱いでへん!!」
「・・・・・・俺やったら脱ぐんか」
「小さい頃一緒にお風呂入ってたやん。それと同じ感覚や」


最近ユウジがよう分からん・・・。また拗ねて漫画読み始めた。しかも私に背むけて。
まぁ、深く考えんようにして私は着替えを再開。着替え終わって化粧を軽くして髪の毛もちゃんとセットしようとしたとき、またユウジが来よった。


「髪の毛イジるん?俺にまかせろや」
「ほんま?やったー」


ユウジの手つきは心地良い。まるで美容室におるような感覚。
ユウジは昔から暇があったら私の髪の毛のお手入れをしてくれる。今日は洋服に合わせて髪の毛を巻いてくれた。


「ハッキリ言って詐欺やんな。ペテンやペテン。」
「は?」
「数分前のお前と今のお前のことや」
「うっさいわ!」







はっきり言うてユウジは外見はめっちゃ良い。外見だけで言ったら相当モテる。
今も街をユウジと2人で歩くと視線が痛い。無駄にスタイルええし顔も悪くないし(ただちょっと目つき悪いんやけど。)問題中身やねんな。
さっきから話題と言ったら小春ちゃんしか出てきてないやん。まぁ、小春ちゃんも私の大切な友人やから話にもついていけとるし別に苦やない。
けどな!!ユウジがうざいしきっしょいねん。


「ユウジ・・・今日小春ちゃんも呼べばよかったやん」
「は?なんでやねん」
「さっきから小春ちゃんの話題しか言うてへんで」


ユウジはめっちゃ驚いた顔をしてる。
え・・・なに。こいつ無意識で小春ちゃんの話してたん?乙女か!!恋する乙女か!


「いや・・・すまん」
「え?なんで謝るん。ユウジが小春ちゃん一筋なのはもう分かってるからええよ」
「それじゃアカンねん・・・!」


ユウジがまたぶつぶつ何か言うとるし。
映画館に着いたし、私はテンションが徐々にあがってきた。だってめっちゃ見たい映画やってん。


「チケット買ってこよか・・・!」
「もう買ってあんねん。あ、上映時間もうすぐや。食べ物買ってこようや」
「・・・へ?あ、お金!」
「ええよ。はよ走ってポップコーン買うてこいや!」


ユウジにお金を渡されてせかされる。
・・・ユウジのこういうたまに優しいところがツボ。本人には絶対言わへんけど。
ソファにどっかり座ってるユウジを見る。「はよしろや!」って。そないでかい声ださなくてもええやん!
またチラっと見ると女の子2人組に声をかけられていた。

・・・む。・・・・・・あ。でた、ユウジの人見知り。無視しとるわアイツ。って!何で私ちょっと嬉しくなってんねん!!もう!


「・・・おまたせ」
「遅いわドアホ」
「・・・さっきどないしたん」
「あん?」
「女の子2人組に話しかけられてたやん!」
「・・・あぁ。しらん」
「・・・ふ、ふふ。もっと愛想よくせなアカンやん!」
「な、なんやねん・・・顔ニヤけてるで。気持ち悪」


ユウジに一蹴りいれてから席に着く。「怪力アホ女」ってユウジに言われたけど気にせん!








のチョイスにしてはおもろい映画やったやん」
「せやろ!?ユウジ好きそうやと思ったもん」


帰り道、ちょうど昔よく遊んでいた公園があったのでベンチに座って小休憩。
ここにはいっぱいいっぱい思い出がたくさんある。懐かしいなぁ。


「よく俺の後ろについてくるストーカーみたいな女の子おったな」
「それ私のことやん」
「中学校に入学した瞬間俺は小春に一目ぼれしてテニス部入ったんや」
「テニスなんてしたことなかったやんな、ユウジ」
「・・・よっしゃ。そろそろ帰るか」
「うん。今日ありがとな!」
「送ってくで」
「カッコつけて言うとるけど家隣やん」


夕日に染められたユウジの横顔は綺麗で、ドキっとした。


「ほな、また遊ぼな」
「ん。今度はユウジの家でお笑いのテレビ見たい」
「おん。・・・そや、ずっと言い忘れてた」
「えー?」


家の前にある門に手をかけようとした瞬間。
言い忘れてたこと?なんやろ。漫画借りパクしよったことか?14巻だけないんやけど。


「好きや」




ずっと聴きたかったあなたの言葉。
私がユウジに抱きついて返事は言うまでもない。でも言う。やないとコイツは不器用やから絶対分からへん。
「私もめっちゃ好き。大好き。」ユウジの腕の中で、ユウジから良い香りがした。
顔をあげたら真っ赤なユウジの顔。私だけのユウジ。

世界にようやく色がついて見えた気がした。







(20110401)