「今日からここで働くことになったさんです。皆さんよろしくお願いします」
「よ、よろしくお願いします!」


バイト初日。駅前のケーキ屋さんがちょうどバイトを募集していたので人生初、応募してみたら受かってしまった。
中学高校と帰宅部で何もしてこなかったわたしが出来るだろうか・・・?


「ほんでこれがショートケーキな」
「はい!」


まずはケーキの名前を覚えること。
わたしより先輩の金色さんに教えてもらうことになった。にしてもこの人、めちゃくちゃファンシー・・・。


ちゃんバイトしたことなかったんやっけ」
「そうなんです・・・!」
「最初は分からんことだらけやと思うけど一緒に頑張ろうや」
「はい!!」


バイトって・・・こんなに楽しいもんなの?!
金色さんを始め店長や他の女の子たちも優しい。基本、あまりお客さんがこないので今日は金色さんからたくさん教えてもらった。


「ほなもう8時やし、あがってええよ!」


店長の一言でみんな更衣室の方に向かう。
ケーキ作ってる側(厨房)にはまだ残ってる人がいた。チラっと覗くと真剣にケーキを作っていた。真面目やなぁ。


ちゃん、初バイトどやった?」
「金色さん!もうめちゃくちゃ楽しいです!!明日も楽しみです!」
「あ、わたしのこと小春ちゃんでええよ。」
「ほんまですか?えっと・・・帰らないんですか?そのっ・・・小春ちゃん!」
「うふふー!ええ感じやで。あぁ、厨房に残っとる人待ってんねん」
「ケーキ作ってた人ですか?」
「そうよん」
「小春ぅうう!遅うなってすまん!!」
「あっ・・・ほな、わたし」
「ユウくん!この子、今日から入ってきてん。ちゃん」
「えっと、よろしくお願いします!」
「・・・おん。ていうか小春!ケーキ新作できたで!!」
ちゃんに素っ気無い態度とんなやユウジ!!」
「あ、全然大丈夫ですよ!それじゃ、お先に失礼します」
「小春ぅう〜!そんな怒らんといてやー」


なに?!こわいこわいこわい!!ユウくん?ユウジ?むっちゃ怖い!
まぁ・・・厨房の人やから今後会う機会はそんなないやろうし、大丈夫やろ。仕事中は接点ないし。
とりあえず怒った小春ちゃんも怖いってことが今日分かりました。







「あれ?今日小春ちゃんおらん日なんやぁ・・・」


残念やなぁ。更衣室の前に張り出されてるシフト表を確認する。
あっ明日小春ちゃんおる!と思ったら明日はわたしが休みやった。


「邪魔」
「えっ?あ、すみません!!」
「・・・小春は月、水曜日以外は全部おる」
「え?あ・・・りがとうございます・・・?」


昨日の怖い人や。小春ちゃんの出勤の日知っとるんすごいなぁ。
ほなあの人は全員の把握しとるんやろうか・・・?うわー、仕事熱心!
わたしも全員の把握したほうがええのかな?


ちゃん!厨房のほうにケーキの箱置いてあるんやけど取りに行ってもらってもええ?」
「どこらへんにあるんですか?」
「あー・・・厨房の人に聞いて!」
「はい!」


厨房って全然別世界な感じがするから入るのちょっと緊張するなぁ。
作ってる人みんな真剣やし。「失礼しまーす」と一応言ってみたら厨房には例の怖い人しかおらん!


「あのー・・・すみません」
「・・・」


無視・・・!?胸にネームプレートがしてあった。ひと・・・うじ?かな。


「一氏さん!!」
「・・・あ!?うわっびびった。なんやねん」
「ケーキの箱ってどこにありますか・・・?」
「そこや、そこ」
「あった。ありがとうございます!・・・そのケーキ、まだ販売してないですよね?」
「当たり前やろ。今暇だったから作ってた」
「すごい・・・!」
「ちょお、お前。その箱組み立ててや」
「?はい。・・・できました・・・けど。」
「甘いもん好き?」
「大好きです!」
「ほなやるわ。保冷材入れたから。ちゃんと家帰ってから食えや」
「わー!ありがとうございます!!」
「はよ仕事戻れ」


しっしと手で追いやられてしまったけど一氏さんって意外と優しいんやなー。しかも手先めっちゃ器用!
ケーキが芸術すぎるんやけど。これ食べるのほんま勿体無い!!
次、出勤の日時被ったらお礼言わなきゃ!







「一氏さん!」
「あ?」


ちょうどバイト先に向かっていたら前に一氏さんがいたのでこの前のケーキのお礼をと思って声をかけた。


「この前のケーキ、すごく食べるの勿体無いくらいすごかったです!」
「食べてへんの?」
「しっかり食べました!」
「食べたんかい!!」
「でも、若干甘すぎたかな?生クリームの量減らすといいと思います」
「・・・へぇ言うやん。今日もなんか作るわ」
「わー!やった!!」
「自分、名前何ていうん」
「前に小春ちゃんに紹介してもらったと思いますー。」
「あー・・・覚えてへん」
「うっわ!小春ちゃんに言いつけるんでもうええです!!」


「嘘やって、。」


「・・・知ってるんやないですか」
「俺の作ったケーキ食べて太っても責任取れへんから」
「でも、作ってくれますよね?」
「当たり前や」


この人の笑った顔、ええな。
そや、一氏さんって小春ちゃんと仲良いから小春ちゃんからいろいろ聞いてみよう。
ケーキ作ってるときの真剣な顔、普段の目つき悪い顔、笑ったときの優しい顔、いろんな顔を見たいって思える。
明日の君の表情はどんな顔をしてるんですか?







(20110911)