「ねぇ、裕次郎・・・・・・ゆーじろ!!」
「・・・んあ・・・ぬーが?」
「よくこの暑さで昼寝できるね」
「それわざわざ起こして言うことかぁ?」


猛暑。
とにかく暑い。今日も暑い。
ジリジリとアスファルトから音がする・・・気がする。

夏休みの宿題も終わって、家に居てもすることがない。
そうなると幼馴染のおうちに遊びに行くしかない。
だけど裕次郎はタンクトップとトランクス姿で寝てた。
部屋のドアも窓も全開だし床は漫画と雑誌とゲーム機が散らばってるいつもの光景。


「もうお昼だよ」
「ああ〜腹減った〜!佐世保食いたい」
「わたし買い物したい!」
「んじゃあ国際通りの方面だな」


相変わらずフットワーク、軽い。誘ったらどこでも付き合ってくれる。

裕次郎が着替えて、キャップ被って、支度をする。
わたしはそれをただじーっと見ていた。別に向こうもわたしも気にしてない。

また、日焼けしてる。テニス焼け?海焼け?それともプール焼け?


「何やってんだよ?早く行こーぜ」
「うんっ!」


「うああ!!にーにーわんのチャリ乗ってった・・・!」
「じゃあバス?」
「時間あるんばぁ?」
「あるある!あと5分後。バス停行こっか」


いつもなら裕次郎に乗っけてもらって行く。
でも今日は裕次郎のお兄ちゃんが何故か裕次郎の自転車を使っているようだ。
っちぇ。どさくさに紛れて裕次郎の背中をぎゅーって出来ないのか。


「・・・えっなに、怒ってるの?顔怖いって」
「だってわんのチャリやっし」


プリプリしてる裕次郎かぁわいっ。
時刻表よりちょっと遅れてきたバスに乗る。
いつもは裕次郎の後頭部ばっか見てるけど、バスに乗ると横顔だ。新鮮!


「ぬーがよ」
「別にー?あ。そーいえば裕次郎、筋肉ついたね」
「マジでぇ!?最近筋トレしてるんさぁ。永四郎はあれ、マジ化け物」
「あー・・・永四郎はねぇ・・・裕次郎ぐらいが丁度いいよ」
「だろぉ!?凛意外とペラッペラやし。知念と慧くんは論外!」
「あはは!」


丁度目的地の停留所に着いたのでわたしと裕次郎はほかの客の流れにのって降りる。
やっぱり外は暑くて、一気に汗が噴き出る。
でも佐世保はすぐそこだ。何食べよっかなぁ。


「おっ意外とすいてるな」
「お昼過ぎてるもんね」


注文を終えて適当に席に着く。今度は向かい合ってるから顔、正面!
って360度もう見飽きてるぐらい一緒にいるんだけどね。何十年と。

相当お腹が減ってたのか勢いよくガツガツとハンバーガーを食べる裕次郎。


「買い物ってなん?」
「服。夏物セールやってんのいま。」
「しんけんかぁ。わんも欲しい」
「やだー!裕次郎の買い物女子並みに長いんだもん」
「わんもレディースフロア付き合ってやっから、先メンズ行こうぜ」
「急にどっか消えるくせにー」


笑って誤魔化す、バカ裕次郎。
やっぱり買い物は永四郎を誘うべきだった。意見が的確だしセンスあるもん。


「うっし!行くか」


テキパキとトレーを片付けてくれて「ありがとー」ってお礼を言うと笑顔の返事がきた。
こーゆーとこ好き。たぶん本人ナチュラルにやってると思うけど。










「ゆーじろ・・・・・・・・・って、やっぱいないし!!」


裕次郎のメンズフロア付き合ってようやくレディースフロアまで来たのに案の定、というかわたしの予言通り先ほどまで一緒にいた裕次郎・・・行方不明。
もう慣れてるからいいんだけどさ。
携帯を取り出し「どこ」って短いメッセージを送りながら店を出る。

ちょうどベンチがあったから休憩がてらそこに座った。ふう。


「かわいこちゃん、1人?俺らとどっか行かね?」
「・・・・・・」
「無視とかよくないよー!」
「人、待ってるんで。」
「友達?そんなら一緒に連れてってあげるよー?」

「遠慮しとくやんに。それと、これ、わんの彼女」
「裕次郎!」

「ッチ。男連れかよ」


しっしっ、と裕次郎はそいつらを手で追いやった。


「ふらぁ!はぐれんなよ!!」
「これ、誰の彼女って?」
・・・ついにおばあ並みに耳悪くなったんばぁ?老化はやっ」
「・・・・・・いーよ、もう。でも、ありがと」

「うり、手ぇ!また迷子になったら面倒やし」

「ちょっと・・・おばあちゃん扱いやめてくれるー!?」
「わっさいびーん!殴るなって!」


こんなぼーりょく的なおばあ怖すぎって裕次郎はまた笑いながら冗談を言うのでもう一発やっといた。 あーあ。せっかく見直したのに!ふらーはどっちだ!


「わんにも色々計画があんの!」
「なんの?」
「・・・・・・言えない」

「言わなかったら永四郎にチクる」
「はぁ!?やーそれ反則やっし!!!」

「じゃあ言って?」
「・・・うっ・・・!!」


裕次郎はキャップをかぶり直して無言で私の手を引いて歩き出す。
どこに行くの?って何度聞いても無言を貫くもんだからわたしは聞くのを止めた。

あれ、この方向って・・・・・・


「海?」
「おー。ちょうど夕日落ちる頃だ」
「本当だ!やっぱ何回見ても綺麗だね」

!そこ座れ!」
「え・・・、なに・・・」
「大事な話やんに」

「告白?」
「うええああ!?やー知ってたんかぁ!?」


詰めが甘いというか、まぁ裕次郎は昔からこういう人間だ。今更驚きはしない。
かまかけたらまんまとハマりやがって。
きっと計画っていうのもロマンチックに告白決めようとしてたんだろう。

っぷ。裕次郎なんだから無理しなくていいのに。


「わたしも裕次郎のこと好きだよ」
「は・・・?マジで!?永四郎じゃなくて?わん??」
「永四郎は一生幼馴染」
「わんは?」
「彼氏・・・?もし別れたら他人ね」
「一生別れねぇって!!」


ぎゅうううっと力いっぱいに抱きしめてくるから苦しいよ。
嬉しいからわたしも裕次郎に手をまわして力いっぱい抱きしめるけどね。


「にーにーマジ怨む」
「へ?」
「チャリで帰りたかった・・・」
「えー!なんで?あ・・・私がいっつもぎゅーってしてるのバレてた!?」
「へ・・・?やー、あれぎゅーってしてたんか!?」


そうかぁ・・・そうか・・・ってぶつぶつ呟いて裕次郎ってば、いま超変な奴。
裕次郎は手招きしてわたしを呼び寄せた。ニヤニヤしてるけど・・・。


「なに?」


小さい子供同士がするようなコソコソ話の体勢になって裕次郎が言ったことと言えば・・・


「やーのおっぱい当たってたやんに」


こ・・・こいつは・・・!!!


「もう絶対!一生!!裕次郎の後ろ乗んない!!!」
「わぁああ!!うそうそ!!!」


すぐ墓穴掘るし、隠し事が一切できない男それがわたしの好きな甲斐裕次郎。












筋肉の件、平古場くん意外とペラいからいっつもジャージの上着てんだと思う。ハッピー七夕!(20170707)