YOU GOT LOW SCORE !!
「頼みますよ、」
木手が頭を下げないまでも、わたしにお願い事とは珍しい。
でもわたしは先ほどからその「お願い」を断ってるわけで話は平行線。
「しょうがありませんね」
「うん、諦めて。」
ようやく諦めたのか木手は去っていった。
・・・かと思われたが、奴は最初から諦めてなどいなかったのだ。
流石だよ、卑怯者め!!こうやって言うと「光栄です」と皮肉な返答。相変わらず嫌味な奴!
「、わんからも頼む」
「・・・・・・ねぇ、ちょっと木手。わざわざ6組から知念くん呼ぶとかずるくない?」
「最終手段ですよ。で、引き受けてくれます?」
「頼む。このままじゃテニス部の活動危ないんばぁよ。監督ブチ切れやし」
「ち・・・知念くん・・・!!」
「っふ。俺の勝ちですね」
「知念くんの勝ちだし!!!」
「それではあのバカを頼みますよ。知念くんは平古場くんのこと宜しくね」
「木手が教えてあげればいーじゃん!!」
「俺は君と違って忙しいんです」
「わたしだって忙しい!」
わたしの反論も空しく、木手は勝ち誇った顔で教室を出て行った。
そう、頼み事っていうのが・・・裕次郎に数学を教えてやってほしいとのこと。
今回のテストで信じられない点数を取ったらしい。(テニス部活動停止レベル)
補習すらサボるので、これ以上どうしようもないってことで数学が得意かつ裕次郎と仲が良い私に話が回ってきた。
平古場も平古場で英語がヤバイらしく、知念くんが駆り出された。ああ、なんて気の毒な知念くん・・・。
「ちょっと・・・裕次郎」
「おー、!ぬーがよ?」
「補習で出た課題!どうしたの?」
「あー・・・・・・・・・えー・・・?どこやったっけ」
PSPでゲームしてたみたいだけど一旦セーブをしてノロノロとようやく課題のプリントを探す。けど動作が遅い裕次郎。
がわんに教えてくれんの?うん、そーだよって会話しながら探す。でもない。
「鞄の中は?」
「んー・・・・・・おっ!すげー!!あったあった!」
小汚いリュックの中からくっしゃくしゃに、しかも端っことか破れてる課題が出てきた・・・。
当たり前だけど真っ白。もう先が思いやられるんだけど。このバカまじで大丈夫?
「この課題提出さないとテニス部やばいんでしょ?」
「そー!しんけんやばい!!永四郎に殺される!!」
「じゃあ早くやっちゃってよー」
「やべっ。凛から借りたシャーペンどっかいった」
「もー全然進まない・・・」
また机の中のもの全部出して(教科書じゃなくて全部漫画)探してる。
あー!!あった!セーーフってヘラヘラ笑う裕次郎・・・ペンケース持ってきてないの?
「ちょっと裕次郎、名前!また名前書き忘れてるって!!」
「あいやー忘れてた」
「ん、まずは分かるとこ自分で埋めてね」
うーん・・・?んー・・・んーと唸りながら(うるさい)問題と見つめあう裕次郎。
時間かかるな、と思ったわたしは暇つぶしに携帯をいじる。
好きなアーティストの最新情報、何か更新されてないかなー。
「・・・・・・・・・やー怒んない?」
「え?なに?」
「まったくわかんない・・・」
やばい・・・!!うそでしょーーーー!?!?!?
だってこれ・・・全問中3でやる基礎中の基礎だし!!中2レベルの問題もある。
補習の生徒に出す課題だから先生もそこのとこ考えてそれ相応のレベルだ。
「裕次郎・・・テニス部どころか高校もやばくない?」
「わんもやばいと思った。タスケテェ」
でも英語は凛に勝ってるし数学だけさぁ。しんけん無理!って裕次郎の言い訳がぐだぐだ始まった。
たぶん平古場も裕次郎も団栗の背比べだと思うけど。
もう中1からやり直した方がいいよって言ってあげたい。
まぁわたしは優しいからそんなこと思ってても言わないけどね。
「今日一日でどうこうなるレベルじゃないね・・・」
「やーが毎日教えに来てくれればいいさぁ」
「他力本願ダメ!!」
数学の教科書を丸めて裕次郎の被ってるキャップのツバをポコっと殴った。
下にズレたキャップをかぶり直しながら、えー?やー、なんてー?たりきほんがん??って言う裕次郎の未来が超心配になった。
「まず、ここはねー・・・」
全10問しかもレベルは基礎・・・裕次郎がしっかり理解できるまで教えていった。
5問目を丁度終えたところで時計を見たらとっくに下校時間過ぎていた・・・!
部活動の時間も終わっていて言ってしまえばもう夜。辺り真っ暗。
「やば!これって提出日いつ?」
「明日までっぽい。ここに書いてあるやんに」
「じゃあ残り5問、家でやってきて!分かんない問題また明日、昼か放課後ね」
「の教え方でーじ分かりやすい!!サンキュ!」
「そ、そう・・・?」
なんか、裕次郎が言うと本音っぽくて嬉しい。
ニッコニコしながら「お礼に送ってやるさぁ」って当たり前でしょ!!
こんな夜に女の子一人歩かせるなっ!!
「うり、乗れ」
「マジ?二人乗りしたことない・・・わたし運動神経、超悪いよ?」
「ぶはっ!マジでぇ!?簡単やっし!わんの腰ちゃんと掴んでれ!!」
「う、うん・・・!!」
跨って、自転車の荷台のとこに座る。裕次郎の腰、ガッチリ掴んだ。ええーっ!こわっ!!
いくぞーって裕次郎がペダルを漕ぎ始めたので足を浮かす・・・けど、これ足どうすればいいの?
「ねぇーこれ足の位置どこ!?」
「はぁー!?」
車輪から離して浮かしたままの足、だんだんと内ももが痛くなってきた。
明日無駄に内もも筋肉痛とか勘弁してほしいんだけど!変な歩き方しちゃう!いやだ!!
「そこ!横んとこに足突っ掛けるんさぁ!」
「うええ!?車輪に足巻き込まれない!?!?」
「それは・・・・・・上手く調整すれー」
「怖い怖い怖い!!無理!ぜぇったい足巻き込まれる!!」
またふきだして笑う裕次郎。
あいひゃーわん涙出てきた!と言いながらケタケタ笑い続ける。
そのせいで蛇行運転するしこっちは全然笑えないんですけど!!遠心力で落ちるって!
「じゃあ場所交代すっかぁ?」
「ばかぁ!出来るわけないじゃん!!」
「っぶふ!!あーもー超おもしれー!!遠回りしてい?」
「いじわるすんなぁー!!」
こんなことなら数学の課題、超スパルタに教えればよかった・・・!
明日覚悟しておけ!晴美ちゃん並みに厳しくしてやる!!
「後ろん席、やーの特等席にしてやっから!」
「もう乗らないー乗りたくないー、内ももいたーい!!」
「特訓あるのみさぁ!」
げぇ。とりあえず明日、内もも筋肉痛決定。
変な歩き方して木手に鼻で笑われ、バカ平古場がエロい勘違いして裕次郎と私の事をからかうのは明日の話。
そんで裕次郎がバイクの免許取って後ろに乗せてもらうのは数年後の話。(20170712)