「いてぇ。」
「あー・・・はいはい。」


暖かい部室の中、跡部専用ソファで昼寝をしていたら突然、忍足がきて「跡部が大変やで!!」と大声で呼びにきた。
何事かと思って急いで飛び出したらベンチに座ってる跡部。
訳を聞いてみるとどうやら転んで捻挫したみたいだった・・・えっ、めずらしい。


「どっかよそ見してたの?」
「・・・まぁ、そんなところだ」
「これ一応病院行かなきゃ。わたしも行くね?」
「おう、頼む」


跡部がどこかに電話をしている。
たぶん病院までの車を出してもらおうとしてるんだろう。坊ちゃんだなぁ。


。校門前まで俺様をおんぶしろ」
「無理に決まってんでしょ」
「・・・肩貸してくれ」
「もう、初めからそう言えばいいのに・・・」


若干身長さがあるけど、ゆっくり校門まで進む。
ときどき「大丈夫?」とか「つらくない?」とかちょっとした会話をする。


「校門前に車くるの?」
「あぁ。・・・おせーな」
「渋滞かなぁ?どうしたんだろうね」
「さみーー・・・!」


今日は一段と風が冷たい。
冬は寒くて大嫌い・・・夏は夏で暑すぎて嫌いだけど。


「おい、お前なんでそんな薄着なんだよ?!」
「だって部室にいたし・・・バタバタしてたから忘れてた。あはは」
「これ着てろ」
「ちょっと馬鹿じゃないの!?風邪引くでしょ!」


強引に上着を着させようとする跡部を無理やり阻止する。
これで怪我+風邪なんてことになったらマネージャー失格だよ・・・!


「ッチ・・・。手貸せ、手」
「手?はい」
「これなら文句ねーだろ?」


手を出したと同時に、手を握られて跡部のポッケの中に一緒に入れられた。


の手、超つめてー」
「冷え性なの。跡部は手・・・暖かいね」


そのままお互い黙ったまま、数分後に車がきた。
手は繋がれたまま一緒に車に乗り込む。
離すタイミングが分からないし、離したくないのかもしれない。


「転んだ理由・・・」
「え?よそ見じゃないの?」
「・・・部室の窓から俺様専用ソファで寝てるお前が見えたから」
「っふ・・・馬鹿じゃん」
「勝手に寝てんじゃねーよ」


見られてたんだ、って笑ってると跡部が今まで見たことないぐらい優しい顔してわたしを見つめた。
思わずドキッとしちゃった。
わたしだけの笑顔であってほしいな、なんて。欲張ってみる。


「・・・悔しいけど、好き」
「知ってた」
「そんなとこも悔しくなるくらいにさ、」


もう一回、自分の想いを伝えようとしたらわたしを抱き寄せて「好きだ」って。
優しく微笑んで、キスをしてくれた。わたしの心はぎゅっとなる。
手は繋いだままで、わたしはこの季節がちょっと好きになった。









(20120125)