「アーン・・・なんなんだ・・・!!?この家は!?」
「わたしんちだよ?」
「そんな事を聞いてんじゃねーよ!」
「あとべ〜あんまり怒ると寿命縮むよ?早死にしたいのー?」
「大体どうしてここにジローがいるんだよ!!?」
は休日は大体昼まで寝ている。
それをよく思わない跡部が休日平日と構わず、決まった時間に起こしに来るのはいつもの事。
がパジャマを着崩しておなかを出して寝ているのが、それもいつもの事。
なのに、跡部が来てみれば、今日は同じベッドに同じ部のジローが一緒に寝ているではないか。
その上、の格好はいつものパジャマではなく、キャミソール一枚。
「昨日、遅くまで一緒に勉強してたらなーんか疲れちゃってさ〜」
「泊まっていくといいよって勧めたのはわたしだよ。昨日母さんも父さんもいなかったし」
「おま・・・!!自分が女だってこと分かってんのか!?」
「んー・・・俺まだ眠いC・・・」
ジローはここぞとばかりにに抱きつく。
胸に顔をうずめられても、何も言わないどころか「はいはい、じゃあ寝てな。ね?」などと言いながら頭をポンポンと撫でる。
跡部の口元が怒りで引きつる。額に浮き出た血管が今にもブチ切れそうだ。
「離れろ、今すぐ」
「イ・ヤ。やーらかいね、って」
「やっ、ちょっとジローくすぐった・・・あははは」
ジローの右手はの胸を触れそうになっている。
我慢の限界だった跡部はの腕を引っ張って、ベッドから引き摺り下ろした。
の体が床にあたってゴンと鈍い音をたてる。
「いっったっ・・・何すんの、もー乱暴」
引き摺り下ろされても床でごろりと寝転んだまま起きようとしない。
上はキャミソール、下はスパッツという露出が多い格好に、跡部の眉間にまた皺がよる。
「・・・てめぇなんて格好をしてるんだよ」
「だってあっついんだもん」
「暑いからって、彼氏でもねぇ男の前でそんなに露出が多い格好をしていいと思ってんのか?
お前は露出狂か?」
「ちょっと何それー!!いっつもは下着姿でも何も言わないくせに」
「んなっ・・・!」
「あー!跡部ってばの下着姿なんか見てヤラC!っていうかずりー!」
「黙れジロー!!・・・、お前そこに座れ」
言われてしぶしぶはその場に正座する。
跡部は自分が羽織っていたジャケットをの足元にかけると、自分もの前に座った。
「両親がいないからって男を家に招く、そのうえ泊めるなんて言語道断だ」
「ごめんなさい。でも跡部はいてもいなくてもうちに泊まってくじゃん」
「俺はいいんだよ」
「えー!?良くないと思うんですけどー!」
跡部は黙っていろという意味を込めて、ジローを睨みつける。
だが、ジローも負けじとばかりに嫉妬の炎を込めた目で跡部を睨む。
跡部は、ジローは後回しとばかりにへと視線を戻した。
「・・・その上同じベッドで寝て・・・しかもお前はそんな格好だ。ジローに何かされたか?」
「跡部だって同じベッドで」
「俺はいいつってんだよ!!大丈夫だったのか!?」
「・・・別に、大丈夫だったよ」
本当はジローが寝ぼけて夜中に抱きついてきたり、胸を触ってきたりと大変だったのだが、それを言うとまた怒られると確信したは黙っておいた。
ジローはもちろん寝ぼけたフリをしていただけなのだが。
「ジロー」
「なに」
「確かお前のクラス明日は古典のテストがあったな」
「だーかーらーに教えてもらって、」
「もう帰れ」
「えー!?」
「えー、じゃねぇよ!テメェいい加減にしろ!!」
「ずりー・・・」
「それ以上言うならレギュラーから落とす。」
「・・・チェッ」
跡部の冷酷な瞳に、ジローが怯む。
それに、このまま駄々をこねれば間違いなく本気で跡部のありとあらゆる手によってレギュラー落ちしてしまう。
ジローはしぶしぶベッドから降りて着替え出した。
はどさくさに紛れて跡部の説教から逃げ出そうと、さり気なく立ち上がって伸びをした。
「・・・じゃね、〜。また来るから!」
「はいはい。ちゃんと古典、勉強するんだよ」
「いい点取ったらご褒美ちょーだいね!」
ニッと笑って、ジローは素早くに抱きつく。
はバランスを崩して、ベッドに倒れこんでしまった。
そこを跡部が素早くジローの首根っこを掴んで、頭をベシッと叩く。
「いてっ!も〜何すんだよー・・・」
「さぁ、さっさと行け。今すぐ出てけ。」
「ちぇ。はいはい、お邪魔しましたーっ」
ジローはひらひらと手を振って出て行った。パタンとドアが閉まる。
ジローがいなくなると急に部屋が静かになって、は気まずそうにベッドから起き上がる。
「あ、あとべ・・・」
「」
「は、はい!」
やっぱり説教される!そう思ったは飛んでくる怒号に備えて目を瞑った。
けれど、何十秒経っても部屋は静かなまま。
「あれ?跡部・・・?」
「お前は・・・あまり俺を困らせるな」
跡部は目頭を押さえて、俯く。
は、珍しく疲れた様子の跡部に驚いて、どうしていいかわからなくなってしまった。
近寄って軽く頭を撫でると、跡部の顔が上がった。
「どうしてジローを泊めたんだ」
そう言った跡部の目は怒りに満ちていて、は怯む。
「・・・疲れた、って言うから・・・」
「それだけで泊めたのか?己の危険も省みねーで」
「危険?べつにジローはそんな子じゃ、」
「はわかってねぇ」
跡部はの手首を掴むと、そのまま乱暴にベッドに押し倒した。
の両手首を固定して、ただの目を見つめる。
「あ、跡部!」
「危機感が足りないんだよ・・・お前は」
跡部がの首に唇を付けた瞬間、チクリとした痛みが走る。
そのまま首筋をたどる唇。
は絶句して、それを見つめていた。
「もしかしたら・・・こう、されてたかもな?」
「あっ・・・!」
跡部の大きな手がの胸を掴む。
下着を付けていなかったせいで、感覚がリアルでは急に恥ずかしくなって首を横に振った。
跡部はそれを無視して突起を摘み、擦りあげる。
「やっ・・・あ・・・」
「・・・嫌なら振り払わなきゃな、こういう時」
「・・・あぁっ!」
「黙ってちゃわかんねーだろ?誰にこんな事をされても、お前は無抵抗なのか?」
「やっ・・・ん・・・あと、べ」
何を言われても無抵抗で、ただ跡部を見つめあげるだけのに、跡部は腹が立った。
「お前が他の男に、こんなに易々と抱かれるのかと思うと、俺は・・・!」
「あとべ・・・っ・・・わたし、跡部だから、抵抗しないよ」
予想外の言葉に跡部の手が止まる。
その隙に、は小さく息をついて呼吸を整える。
「は・・・?何言って・・・」
「跡部、怒らせてごめん。わたし、跡部がわたしの事好きなの知っててジロー泊めたの」
「・・・なんだって?」
「跡部、この間、女の子に手紙もらってたじゃん。それ見たら悲しくなっちゃって・・・それで、嫉妬させて仕返ししてやろうと」
「・・・お前ってやつは・・・」
「・・・ごめんね、跡部。わたし、跡部のこと好き。大好き。だから、」
少し眉を下げて告白を繰り返すがすごく愛しいと思い、跡部はを強く抱きしめた。
「めちゃくちゃ嫉妬したに決まってんだろ・・・」
「・・・うん、ごめんね」
「次にしたら、ぜってージローのやつ殴る」
「
!! それはやめようね・・・!」
「」
「はい」
「順番が前後したな・・・」
「いいよ、ふふ・・・」
「お前のことが好きだ」
「わたしも・・・好き!」
ぎゅっと飛びつくの体を起こした。
はひどく嬉しそうに跡部に頬摺りを繰り返している。
「ちけーよ」
「だって嬉しいんだもん!!」
「キスするぞ」
「・・・・・・え?なんて?」
聞こえなかったふりをする。
さっきまで了承もなくあんなことやこんなことされていたのに。
「また順番が前後したが、お前とキス」
「わああーーー!!もう!」
はぁ、と大きくため息をつく。
しかし跡部はいたって真面目で、の肩を優しく抱く。
「いいか?」
「聞かれるのはイヤ」
頬を膨らませてから、静かに目を閉じる。
跡部はゆっくりと肩を抱き寄せ、触れるだけのキスをした。
唇を離して目を開くと、とても嬉しそうなの顔。
「・・・もうジローは絶対泊めんなよ。もちろん他の男も、だ。」
「わかってるよー。わたしはもう跡部のものなんだから」
「・・・あまり可愛いこと言うな」
ちょっと困った顔で、の顎をすくいあげる跡部。
はニコニコと嬉しそうな表情で再び目を閉じた。