OH MY GOOOOOOD!!!
HELP ME!
「樺地くん、そのポジションを私に譲ってください」
「・・・・・・ウ?」
「何だテメェ」
「わたしはだよ!」
「アーン?」
「てゆーか同じクラスじゃん!」
「知るか」
「おーう・・・相変わらずのSっぷり・・・もっと罵ってください!」
「変態は出て行け」
「よし来た、わたしに任せて!変態はどいつだオルァ!」
「お前のことだ」
ご紹介遅れました!わたしは。跡部くんに恋する中学3年生です!
いきなり電波チックなヒロインだなおい、引っ込め!なんて言わないでね。悪いけどこのテンションのまま最後までやっちゃうよ!
「うぜぇ」
そしていきなり跡部くんはご機嫌ナナメです。
多分わたしのせい。ていうか絶対わたしのせい!そうだよねー!いきなり生徒会室に乗り込んできたら機嫌も悪くなるよねー!
でもいいの。跡部くんのお傍に居られるならウザがられたって!
これって愛だよね!愛じゃなきゃ何だってんだ!!
「ストーカーだろ」
愛故に2年の樺地くんにポジション入れ替わってもらっちゃった。
だって樺地くんいつも跡部くんと一緒にいるんだもん、うらやましすぎる!
わたしなんて今まで同じクラスっていう共通点しかなくて、ただ見てるしか出来なくて・・・。
「そういやお前、いつも俺様のこと見てたな・・・ニヤニヤしながら」
何ていうかもうすっごい健気でしょ!?全国の女子はわたしを見習うべき。
テニス部の練習見に行っても、こっそり影から応援することしか出来なかったしこのドキドキを抑えるために、胸に手を当てて、そっと息を吐くの。すごく人気のある跡部くんを遠くから見守ってるだけでいいの・・・。
「いつもぎゃーぎゃーうるせぇのはテメェか」
そうやっていちいちノッてくれる跡部くんも大好きだよ!
「今日からわたしが樺地くんの代わりだよ!」
「ふざけんな。どっか行け。去れ。散れ」
「もう!照れてるんでしょー?そうだな、そうに違いない」
「・・・・・・・・・・・・・・・」
ウザさのあまり言葉も出ねぇよってヤツですか?
でしょうね〜わたしも自分で言って、ちょっとウザかった!ごめんごめん!
1ミリだけ大人しくするよ、1ミリだけね。
「ねぇねぇ跡部くん!」
「・・・・・・・・・」
「お嫁さんにしてく
「断る」
・・・。」
即答どころか、まだ最後まで喋ってないよわたし。
キビシーな跡部くんは。でもそんなところも大好き!!むしろ踏まれて罵られたいくらいです!
「じゃあ望み通りにしてやろうかアーーン?」
「お、お願いします!!」
やばい、思わず土下座しちゃったよ。どんだけMなんだわたし。
でも跡部くんにはアンアン言わせたい。わたしってば根っからの攻め気質だし?うん、しょーがないよ。
時にはM、時にはS!それでいいじゃない!
「変態には興味ねぇ」
「変態じゃないよ!」
「アンアン言わせたいって言ってるヤツのどこが変態じゃねぇんだ」
「ちょ・・・!跡部くんだって好きな子にアンアン言わせたいでしょ!?」
「おっま・・・!でけぇ声で変な発言すんじゃねぇよ!」
「男なんてみんな変態だよ!頭の中で何考えてる・・・・・・は!まさか跡部くんわたしのことも・・・!」
「ざけんな!ブッ殺すぞ!!」
きゃああああああ!!!むしろ殺して!って本気で殺そうとしないで!
そのバットどっから持ってきたの跡部くん!!そして本気で振り下ろさないでーーー!!!
死ぬ!死んじゃう!
「もう跡部くんてばヤンデレだねっ」
「はぁ?意味不明なんだよ!」
「あーもう分かった分かったよ・・・生徒会の仕事終わるまで待っててあげるよ!」
「さっさと自分の星へ帰れ!!」
跡部くんはわたしの首根っこを掴んで、窓を開ける。
って、ちょっと待てー!どうするつもり!?どうするつもり!!?
もしかしてここから投げ捨てるとかそういうアレですか!?
一応確認しておくけど、ここ3階だよね?アッハッハ・・・・・・死ぬ!
「待って!大人しくしてるから捨てないで!」
「大人しくしなくていいから出て行け、窓から出て行け」
「何で窓なんですか!?」
跡部くんは大きなため息をつくと、どすんと椅子に座った。
わたしはそそくさと跡部くんの隣に腰を下ろす。ちらっと跡部くんを見ると、何でそこに座ってんだアーン?と言いたそうな表情で私を見ていた。
ていうか今更だけど眼鏡!跡部くん眼鏡してる!!やばい!超萌える!!
いいなぁ眼鏡・・・素敵だ。眼鏡になりたい。
「跡部くん・・・超カッケーですね」
「うるせぇ、言われなくても知ってる」
もう・・・そういうとこホント好きです。
悶えた私は机に思い切り頭をぶつけた。ゴンッという鈍い音が生徒会室に響く。
だめだこのままでは跡部くんに萌え殺される。鼻血とか出そう。どうしよう・・・ホントどうしよう。もう大好きだ!
相変わらず悶えるわたしを放置して、跡部くんはさっさと帰る準備を始めた。
「あれ、もう終わったの?」
「お前がうるせぇから家でやる」
「えー・・・帰っちゃうんだ・・・じゃあわたしも帰ろう」
「じゃあ俺様は残る」
「じゃあわたしも」
「・・・・・・・・・・・・」
「・・・えへ!」
そう言って、パチン☆と跡部くんに向けてウィンクをするときめぇと一言で切り捨てられた。
だめだよ跡部くん、そういうこと言っちゃ・・・ますます惚れちゃうから!
どんどん罵ってください。その方がメラメラと燃え上がるんです、マイハートは!
「はぁ・・・」
「お、諦めのため息ですね」
「1ミリでも動いたら張り倒すからな」
どうせなら押し倒されたい。
って冗談!冗談です!!だからそんな般若みたいな顔で見ないで!折角の美形が台無しだよ!
あぁ〜もうホント好きだなぁ・・・かっこいいなぁ・・・。
「・・・跡部くん」
「・・・・・・・・・・・・・・・」
「あーとーべーくーんんんん!!」
「・・・ッチ、何だよ」
眼鏡をくいっと上げ、面倒くさそうに跡部くんは返事をした。
少しだけこちらに視線を向けてくれる。それだけのことなのに、すごくすごく嬉しくてたまらない。
だから名前を呼んだにも関わらず、ぼーっと跡部くんの顔を見つめていた。
あー・・・もうだめだぁ・・・・・・ムラムラする。だってこんな綺麗な男を目の前にしてムラムラしないなんて無理な話だよ。
髪だって見るからにサラサラだし、お肌もツヤツヤだし。
書類を持つ長い指とか、低くて甘い声とか、全てが色っぽくて・・・いろいろ我慢できません。
「跡部くん・・・・・」
わたしは椅子から立ち上がると、跡部くんがかけている眼鏡に手を触れた。
突然の行動に彼は凄く驚いた表情を見せる。初めて見るその表情にひどく欲情した。
外した眼鏡を机の上に置き、跡部くんの頬にそっと手を伸ばす。
思っていた通り・・・赤ちゃんみたいな肌触り。わたしはその頬をそっと撫でた。
「っ!ちょ、な、何してんだよ!?」
「跡部くんが悪いんだよ・・・すごく綺麗な跡部くんが悪いんです」
跡部くんの耳に自身の唇を寄せて、フッと息をかける。
そうすると跡部くんは片手で耳を塞いで、わたしから体を遠ざけた。
それによって彼の頬に触れていた私の手の平は宙を彷徨う。どうして逃げちゃうの?
もっと触っていたいのに・・・。
「お前・・・俺をからかってんのか?」
「からかう?まさか〜そんなことしてないよ?」
「・・・なら、どういうつもりだ」
「わたしはただ跡部くんが好きで、こうしてるだけだよ」
好きだから、触りたいんだよ。ずっと我慢してたんだから。
誰もいない生徒会室。わたしと跡部くんのふたりきり。
こんな絶好のチャンスをこのわたしが逃すわけないでしょうよ。さっきも言ったよね。
わたし、根っからの攻め気質なんだよ?相手が跡部くんだろうと関係ないの。
わたしはわたしのやりたいようにやるだけだから。ほら、だからもう諦めてその身体を私に委ねちゃいなよ。
ね、跡部くん。
「断るっ!!」
ズガンッと頭に衝撃を喰らった。
目の前の跡部くんは私の頭にチョップをお見舞いしてくれたようだ。それも渾身の力で。
あ た ま が わ れ る か と お も っ た 。
さっきとは別の意味で悶えるわたし。痛い・・・痛すぎる・・・でも、でも諦めなぃいいいいい!!!
私も負けてたまるか!と跡部くんに襲い掛かる。
どたんばたんと暴れて、転げまわるわたしたち。椅子が倒れ、机の上の資料はパサリと床に落ちた。
「えへへ〜わたしの勝ち!」
「ッチ・・・女のくせに馬鹿力過ぎんだろ」
結果、わたしは仰向けの跡部くんに馬乗り状態。
彼の両手を床に押し付けて、私は満足気にニヤリと笑う。そしてそんなわたしを悔しそうに見上げる跡部くん。
フフフーいい絵ですよ、美少年!
まさか跡部くんの上に乗っかる日が来るなんて思ってもなかった!!
「退け!いつまでこうしてるつもりだ!」
必死に腕を動かそうとする跡部くん。やっぱり男だなぁ。
押さえ込むのはさすがに無理かも。そう思い、ぱっと腕を解放すると、跡部くんは上半身を起こそうと床に肘を付く。
わたしは、そうやって体を起こそうとする跡部くんに顔を近づけて、唇を奪った。
「っ!てっめ・・・!」
跡部くんがわたしの腕を掴もうと手を伸ばすが、私はそれをふわりと交わしぴょんと立ち上がる。
床に座ったままでわたしを見上げる跡部くんに向けて、ぺろっと舌を出す。
「ごちそうさまでしたっ」
じゃね〜!とそのまま跡部くんを放置して、わたしは生徒会室を出た。
そして荒れた生徒会室に一人残された跡部は、しばらく動けずにいた。
あんな訳の分からない女に振り回されて、挙句キスまでされて。ムカツク。悔しい。何だあいつ。何がしたいんだ。いろんな感情が胸の中を掻き乱す。
くそっ、と小さく呟き、さっき触れた場所を手の甲で隠した。
「何、ドキドキしてんだ・・・」
自分の耳に届く自分の心臓の音を聞いて、馬鹿か俺は、と己を罵った。
(20090620)