Utmost love



「何してやがる、鳳」
「跡部さんっ・・・日吉が怖いんです!」


うるさい。
自分でもわかってた、機嫌が悪い、それも酷いくらいに。
















大体にして、俺の機嫌を左右する最近の一番の原因はさんにあると思う。


「日吉くん、無理してわたしとばっかり一緒にいなくていいんだよ?」
「は?」


無理してませんけど。
その言葉は、さんの柔らかい声に包まれて消えていく。


「日吉くん、格好良いし、モテるでしょう?若いんだし、もっと遊んだ方が、」
「余計なお世話なんだよ。大体アンタ、俺と一個しか変わらないだろ」
「・・・ごめん、年上面して」
「本当に腹立ちますね、やめて下さい」
「ごめんね」


なよなよとしたこの先輩は、一応俺の彼女ではあるが、どうしてこうもおかしな妄想が激しいんだ。
机を指でコツコツと叩く速度が速くなっていたらしい。
さんが本当に申し訳なさそうな顔で、もう一度「ごめん」と呟く。


「もういいんですけど」
「うん・・・ごめんね、日吉くん。ありがとう」
「・・・抱かせろ」
「は?」
「抱かせろって言ってるんです。聞こえませんでしたか?」
「聞こえた、けど、」


何か言おうとしたさんを強引に机に押し倒し、口付ける。
本当にこの人には意見ってものがないんだろうか。
何度か抱いたが、いつも俺の言いなりだった。


「脱げ」
「うん」


この通り。
何の迷いもなく服を全部脱ぎ捨てて、下着姿で机に座る先輩。
俺を見上げる瞳は涙で濡れていた。いっつも、そうだ。


「はぁ・・・
「う、うん!」
「何嬉しそうにしてるんだよ」
「名前!呼び捨てにしてくれたから!」


確かに最中以外に下の名前を呼び捨てで呼んだ事はなかったが、これから乱暴に抱かれようってのに何ニコニコ笑ってるんだ。
理解不能だ、この人は。
ネクタイを緩めながら頭を揺れるくらいの勢いで撫でても、まだ笑ってやがる。


「俺に抱かれるのは、怖いですか?」
「ううん、大丈夫。日吉くんは優しいから」
「・・・本気で言ってるんですか?」
「うん?」


あれだけ乱暴にしてるってのに、優しいだと?
まったくもってわからない。


「ドMですね、アンタ」
「え!?」
「下の名前で呼んでくれませんか。その呼び方、歯がゆくて嫌ですね」
「若?いいの?呼んでも」
「当然でしょう」


ぱぁっと明るくなる顔。ギュッと俺に抱き付く仕草。
可愛い。自然にそう思った自分に愕然とする。
脱ぎ捨てたシャツを回収して、もう一度着せてやると、はきょとんとして俺を見上げた。


「あの・・・しないの?」
「アンタの体だけが好きなワケじゃないんでね、今はやめます」
「そう」
「何ホッとしてんですか。そんなに俺に抱かれるの嫌ですか」
「い、嫌じゃないけど!ここはどうかと思って・・・」
「ま、帰ったらたっぷり可愛がってやりますよ」














そういうワケで早く帰りたい。イライラする。
いつも跡部さん目当てで練習を見に来る女達の後ろに、ぽつんとが立っている。
そんな所に立たれると、集中できない。邪魔なんだよ。
でも、あと少しで終わ


「日吉、外周行って来い」
「・・・は?」
「テメェ、今日ボケッとしてただろ。追加メニューだ、行け」


そして跡部さんの有り難すぎる余計なお世話によって、俺の機嫌は更に悪くなる。
今日は泣いて嫌がってもやめてあげません。全部跡部さんのせいだからな。


「げ、下剋上だっ・・・」








(20111205)