look back on the past





、俺・・・お前のことずっと好きだった」
「岳人・・・ごめん。実はわたし、侑士と付き合い始めたんだ」


頬を染めて恥かしそうに俯いたと、初めて失恋というものを経験した俺。確か2週間前くらいの話。


「なあ、いいかげん泣き止めって」
「うっ・・・うるさい!止まんないの!」
「なんで俺んとこ来るんだよ」
「だって岳人が一番落ち着くんだもん・・・!」
「はあ・・・」


俺の部屋で背中を向けながらぐずぐず鼻を鳴らす
なんでも昨日、付き合ってた侑士と別れたらしい。どうやらこの様子からじゃがフラれたんだろう。
なんなんだよマジで。知らない間に付き合ってたのに、今度は気付いたら別れてるし。
冗談じゃねぇよ!それにしたって俺ん家に来るのは止めて欲しい。いくら幼馴染で家が近くだからって。
下に母さんが居るからいいものの、男の部屋にほいほい上がりこむこいつはどうかしてる。
信頼されてるって言えば聞こえはいいけど、ただ単に俺のことどうも思っちゃいないだけ。
こいつもしかして俺が2週間前に告白したの忘れてんじゃねぇのか?


「で?なんで侑士にフラれたわけ?」
「知らないわよ!あいつに聞いてよっ」
「・・・遊ばれた訳か」
「あほ岳人!もっと言葉選んでよね!」
「俺がこういう奴って分かっててうち来たくせに」
「も、アホ!馬鹿!死ね・・・っ」


目を赤くしながらこっちを睨んで悪態ついてくる。何?俺が悪ぃの?
俺がティッシュ箱を投げてやるとそれを上手くキャッチして鼻を思いっきりかんでる。
あーあ、女の子だったらもうちょっと控えろよな。俺のこと全然意識してないみたいで悲しいじゃん。
でもたぶんその通りだからあえて気にしないでおこう。こっちが泣きたくなる。
ポロポロと次から次へと涙を零していく。無償に侑士を殴りたくなってきた。あいつは本当に馬鹿だ。
侑士の女癖の悪さはずっと前から知ってたくせに。


「侑士・・・もう飽きたとか言ってた」
「ふーん・・・」
「そん時頭真っ白だったから・・・何も言えなかったし!」
「文句の一つでも言っときゃ良かったのに」
「悔しい・・・わたしだけが本気で、馬鹿みたい」
「・・・」


気の利いた言葉も見つからない俺はの傍に寄って頭を撫でてやることしか出来ないけど。
まあとりあえず明日、侑士の顔面一発ぶん殴ってくるから。そんなことしか出来ないけど。
今は俺の隣で小さく泣いてるこいつを出来るだけ笑わせる努力をしてみるしかない。


「明日ふたりで侑士の血祭りな」
「うん、そうだね」


いっそ横に居るを押し倒せたらどんなに楽なんだろう。でも絶対そんなことしない。
まず第一に俺にそんな勇気があるとも思えない。それに俺は侑士なんかよりもずっとずっとのこと大切に思ってるから。
そう考えるとやっぱりは選ぶ相手を間違えた。
もう一度、の頭に手を乗せてやると今度は少し寂しそうに、小さく「ありがとう」とだけ呟いた。


(だから俺にしとけばよかったのに。)なんて、な。





(20080703)