a kind look




「・・・・・・・・・」
「・・・何?がっくん」
「・・・えっと」


拝啓、父上様。俺は今まさに人生最大の難関を迎えています。
9月12日。俺の誕生日・・・知ってる奴もいる。知らない奴もいる。忘れてる奴もいる。忘れてない奴もいる。
すでにいろんな奴からいっぱいプレゼントをもらってるわけだけど・・・未だこいつからは貰えず。
まぁそりゃそうだ。俺が言ってねぇからな・・・でもジローと違ってちゃんと自覚はある。
あえて言うなら言う勇気がない。俺のことだからノリとかそんなんで軽く言えるだろーと思ってた。
ら、どっこい。もたもたしてる間についに誕生日当日だったわけだ。
ということで俺は今からデ、デート・・・に誘う訳だけど・・・というか誘ってるわけだけど・・・


「どうしたの?」
「うん、・・・えっと・・・その、」
「うん」
「・・・」
「?」


言え!頑張れ俺!漢だろ!?


「その・・・」
「うん」


今だ!今しかない!もじもじすんな!


「えっと・・・今からどっか行かねぇ?」
「どっかって・・・?今バリバリ部活中だよ?」
「い、いーんだよ!その、俺ヒマだから!!」
「ヒマなの?」
「ち、違ぇよ!!」
「・・・え?」


何言ってんだ俺えええ!!!!


「とにかく行くぞ!」
「うん?」


っしゃー!俺は了解を得てからすぐさま強引に学校を出た。
・・・ジャージだけど・・・まぁ、いいや。


「向日先輩行ってしまいましたね」
「ほっとけ、長太郎」
「・・・ッチ!仕方ねぇな」
「えー!?俺ん時休みとかなかったC!」
「岳人・・・頑張れや!」





「ねぇねぇ、どこ行くの!?」
「え!?」


困ったな・・・。ぶっちゃけどこ行くとか決めてなかった・・・。
どうしよう・・・公園とかは地味すぎるし?映画?俺寝るし、たぶんこいつも寝るな。
どうする!!・・・どっか?


「・・・ゲ、ゲーセン!」
「わーい!ゲーセン行く行く〜!」


あっぶねぇ・・・ちょっとさっきから危ねぇな俺。しっかりしろよ!
昨日侑士にアプローチの仕方教えてもらったじゃん!っていうかゲーセンって何だよ。
我ながら・・・色気ねぇのもいいとこだよなぁ。


「よし!がっくん早く行こ!」
「あ!こら!待てよ」
「おわ!?」
「・・・ったく危ねぇな。ほら!」
「何?」
「手だよ手!つ・な・ぐ・の!はぐれるだろ!?」
「うん!」


・・・サンキュー侑士!!!
人生初めての好きな人だからどうすんのかよく分かんねぇからな。とりあえず俺、あせんな。
ここでちょっと良い雰囲気になったりして・・・告白できるかだ。まず雰囲気作り、そんで告白、そのまま押し倒す・・・ってアホ侑士!!!
・・・・・・はぁ。実はあんな余裕ぶっこいて手繋いだけど・・・ヤバイ、なんか汗でべちゃべちゃになりそうだ!!!
すでに俺の手を湿めっぽくなって来ている。まぁタイミングよく今日は湿っぽい天気だからセーフだ。(関係ない)
なんて考えてる間にゲーセン到着。


「到着〜!がっくん何やる!?何やる!?」
「太鼓○達人だろ!!」
「えー!わたし、それ言っとくけど超達人だからねー!」
「負けねぇ!」


ドンドンドンドコドカドカドンッカッカッドドン・・・・・


「次は!?」
「アレしたい!射的の!」


ばあーん!ズダダダダダッ!!・・・ちゅどーーん!


「次何やる!?」
「ホッケーだろ!ホッケー!」
「いぇーーい!!」


カカーンカキーンカンカンカキーーーン・・・ッ


「次は!?」
「・・・あれっ!?!?」


やべぇ・・・うっかりゲームを楽しんでしまった。
もう暗いじゃん駄目駄目じゃん俺。本来の目的つい忘れてたぜ・・・ま、いっか!
楽しかったし。あいつも楽しそうだし・・・って居ねぇえええ!!!!
え!?どこ行った!?クソクソ!なんで今日こんなに人多いんだよ!
あ!いた!なんだあいつUFOキャッチャーの前で張り付いてる?

「何やってんだよ・・・」
「あ!がっくん見てあれ!あのうさぎ!すっごいかわいい!」


うさぎ・・・うさぎ・・・?え、あの青色のブサイクなうさぎかよ。
か、かわいいのかアレ!?女子ってわかんねぇ・・・なんか顔つぶれてるじゃん。


「欲しいなー」
「・・・取ってやるよ」
「え!?ホント!?取れるの!?」
「俺の黄金の左手なめんなよ!」
「わー!がっくん頑張れ!」


・・・ここで失敗したら恥かしいぞ俺!
大丈夫だ。黄金の左手は俺の中にある。自分を信じろ岳人!!


「てりゃぁああ!!!」
「おお・・・っ!」


「やったー!がっくん取れた!ありがとー!」
「おぅ!」
「あ、がっくん後ろ向いてて!」
「ん?」


ウィーン がしゃん!


「いいよー」
「何やってたんだ?」


振り返ると両手に二匹のブサイクなうさぎを持っていた。
っておい、自分で取れんのかよ。しかもアッサリと。 ちょっと浮かれてた自分が恥かしいじゃん!


「はい!」
「?」
「これがっくんにあげる!」
「いいの?」
「うん!がっくんに取ってもらったのがわたしので、わたしが取ったのががっくんの!」
「・・・さんきゅ」


やべぇ・・・マジ嬉しい!雰囲気とか告白とか、今そんなんどうでもいいや。
今日はそんなんなし!プレゼント貰えたし・・・。
俺がブサイクなうさぎを抱えて笑ったら、あいつもブサイクなうさぎ抱いてにっこり笑った。


「がっくん今日は楽しかったよ!!」


くせぇけど・・・君の笑顔が何よりのプレゼント。





(20100912)