I'll let you know





友達という言葉じゃ軽すぎて、好きな人というには重すぎるけど・・・そんな関係が、ひどく心地いい。


「あの、さ・・・ちょっといいか?」


せっせとマネージャー業をしている私に話しかけてきたのは、休憩に入ったばかりの宍戸亮。


「ん?何?どしたの??」
「ちょっと聞いて欲しいことあんだけどよ」


部内では結構仲がいい方で、勉強や部活の悩みなんかを話し合ってる仲だったりする。その宍戸が、こんな面持ちで「話がある」と言ってくるのは本当に稀で。


「分かった。彼女のことでしょ?」
「・・・・・・・・・」
「いいよ、聞いてあげる。何かあった?」
「・・・うん、あのさ・・・・・・」


宍戸の口から語られる彼女の姿は、私にはあまりいい印象を与えなかったけどそれでも宍戸は、その彼女を好きだと、はっきりそう言った。
彼女のわがままを聞いてあげられないのが苦しいと。
今の自分はテニスが一番大事だと言うことを時々責めたり。
けれど、ちゃんと彼女を想い、毎日電話もメールもして気遣っても、彼女はそんな宍戸の想いをあっさりと交わしてしまう。
そんな彼女に苛立ちを覚え、疲労を感じ、何度も別れを切り出そうとした。
それでもふと見せる、彼女の寂しそうな顔が自分の心を掴んで離さなくてこいつには俺がいないとダメなんだと思わせる、と。
そう、ぽつぽつと宍戸は話した。


「はっきり言っちゃっていい?」
「おう」
「別れたほうがいいんじゃない?」

「・・・だよな」

「まぁ第3者が口出すことじゃないけど、さ・・・宍戸が苦しんでる姿、あんまり見たくない」
「・・・・・・・・・」
「あんたがテニス頑張ってる姿は誰よりも近くで見た来たつもりだし、テニスに対する思いの強さも知ってる。だから、あんたは自分にとって今一番大切にしたいものを選んだらいいんじゃないかな。」


在り来たりな言葉しか言えなかったけど、宍戸は嬉しそうに笑った。


「何か・・・おまえに話してちょっとすっきりした」
「そ?それはよかった。ちゃんと助言してあげられなくてごめん」
「そんなことねーよ」
「宍戸らしくやればいいよ。私、応援してるからさ」
「おう」




それだけ言うと、宍戸はラケットを片手にコートへ戻って行った。私はそんな宍戸を見送った後、仕事の続きをし始めた。






宍戸と彼女の事を知って、数週間経った。そんな時、宍戸から呼び出された。


「宍戸?」
「・・・悪ぃな、急に呼び出して」
「ううん、いいよ」
「あの、さ・・・ずっと面と向かって言おうと思ってた事があって」
「うん?」
「・・・ありがとな」
「え?」
「いつも俺の相談とか愚痴とか聞いてくれて・・・ずっとお礼が言いたくて」
「・・・・・・・・・ん。」
「ありがとう。お前にはホントに感謝してる」
「いいよ。気にしないで」


期待していた私が馬鹿みたいで。純粋に相談をのってたとかじゃなくて、下心で宍戸の相談にのってたと気づく自分。
でも、この恋は絶対に叶わない恋。
心の鍵をしっかりしめて、笑顔で言う。


「何かあったら相談のるよ」


純粋な気持ちで。


「・・・んじゃ今のってよ」
「は?今?」
「俺。彼女と別れたんだけど・・・」


高鳴る鼓動。止まれ、治まれ、宍戸に聞こえちゃう。


「なぐさめてくれない?」
「・・・・・・し、下心があってもいいですか・・・」
「はは!大歓迎」


宍戸は笑って私を抱きしめてくれた。
相談していくうちにお前の事が気になってしょうがなかった。と宍戸小さな声で耳打ちしてくれた。
急に恥ずかしさがこみあげてきた。



「・・・ありがと」




(20100929)