「っていつも朝はカロリーメイトだよね」
「うん。朝ってお腹減ってないからご飯食べれないんだよねー・・・」
「なにそれ!!普通に白飯2杯いけるわ!」
「あ、ごめんコンビニ寄るから先に行ってて」
「またカロリーメイト?よく飽きないねー」
「うん。チョコレート味!」
友人に先に行ってもらい、ほぼ毎日通ってるここのコンビニ。
レジをしてくれるおばちゃんと仲良くなるくらい通いつめている。
(もっと栄養あるもん食べなさい!ってこの間怒られた)(カロリーメイトも栄養あるもん)
あ、チョコレート味ラスト1個じゃん。ラッキー!
手を伸ばしたその瞬間・・・
「「ん?」」
誰かの手と重なった。顔の半分をマフラーに埋めている銀髪の男。
あ、ちょっと格好良いかも。って思ったことを私はすぐに後悔した。
その男は無言でカロリーメイトのチョコレート味を取っていった。
「は?え、ちょ・・・!!・・・・・・まじで!?」
私の声もむなしく、スタスタとレジまで行ってしまうあの男。
少女漫画的なドキッな展開なんてあるわけない。
仕方なく隣にあったメープル味を手に取る・・・。許せないあの男・・・!!
「ってことがさっきコンビニであったの。」
「あー、それで今日はメープル味なんだ」
「立海の制服着てた!むかつく!!」
女子の情報網を甘く見ていた。
ちょっと特徴を言っただけで数時間後には誰か分かってしまうのだ。
「立海テニス部の仁王雅治だって!結構有名だよ!!ほら、これ写メ!」
「あー!確かにイケメンかも。でも隣にいるこの眼鏡の人が良い」
「それはないない!こっちの人じゃない!?このガムの!」
いつの間にか自分の好きなタイプは誰かという話になっていた。
それから話は発展していき・・・
「ちょっと立海に行ってみない?」
「はぁ!!?」
そして放課後、友人に引っ張られ立海へ・・・。
「ぜーーーったい嫌!!!」
「あ、いたよ!あんたの仁王くん!!」
「私のじゃないっつーの!」
ほらほら、と友人に無理矢理背中を押され近づく距離。
仁王とやらは(私の買うはずだった)カロリーメイトを手に、不思議そうにこっちを見ている。
「あ、えっと・・・」
「 ? 柳生の知り合いか?」
「いえ、てっきり仁王くんの知り合いかと」
「そのカロリーメイト私が買うはずだったんです!!」
・・・私は立海にわざわざこれを言うために来たのか。
しかも私、ストーカーみたいじゃん!何だこれ!?冷静になって後ろを向くと友人達の姿はなくなっていた。あいつら覚えとけよ・・・!!
「は?」
「あ、違うの!ほら、朝!!」
説明しても仁王は覚えていないの一点張りだ。
すると、横にいた眼鏡の男が私の味方になってくれた。良い人だ、この人。
「仁王くん、レディーファーストは大事だと常日頃私は言っているでしょう」
「そんなことしたら女はつけあがるぜよ」
「彼女にそれを譲りたまえ」
「俺が買ったのにか?」
「そうです」
「え、いや・・・そこまでは・・・っていうかただ私は無理矢理連れてこられて・・・その」
「仁王くんに代わって私が謝罪します」
「いいです!大丈夫です!!ほんと!!!謝らないでください!」
「しかし・・・」
「面倒くさいのう」
一言そう言った仁王は私の顎をクイッと持ち上げ、カロリーメイトを口に突っ込んだ。
ムードやトキメキなんて全くない。全然喋れない。
「これでええじゃろ」
「あなたは乱暴すぎます。」
口に水分がなくて全く喋れない。これで良いわけないだろ!!
仁王の左手にさっきまで持ってなかったイチゴミルクの紙ジュースがあった。これだ!飲まなきゃ喉に詰まって死ぬ!!
「あ。」
「・・・・・・・・・はぁ!殺す気か!!」
「クックック。おまんは面白いぜよ」
そう言って笑う。ば、馬鹿にされた・・・!!!
もう絶対一生会わない!と心に決めてその場をあとにした。なにあいつ!むかつくむかつくむかつく!
翌日、また同じコンビニで会うなんてこの時の私はまだ知らない。
(20140126)