「ねぇ、昨日駅で仁王見かけたんだけどさ」
「え!?」
「すごい綺麗な年上の女の人と歩いてたよ。彼女かな?」
「・・・え?へ、へー・・・。仁王って彼女いたんだ・・・」










ショ・・・ショック・・・!!しかも年上かよ・・・!勝ち目ない、ってか・・・勝負にもなんない。
仁王とは隣の席になったのがきっかけで仲良くなった。
彼女は作らない主義だって勝手に思ってたから、その状況に安心してたのかもしれない。


。」
「・・・・・・・・・。」
「おい。生きとるんか?」
「・・・ッわ!何!?びっくりしたー・・・!」
「次、移動ぜよ。もう誰もおらんき早う用意しんしゃい」
「っげ・・・!!!!」


いつの間にか教室には誰もいなくて仁王とわたししかいなかった。
でも・・・どうも授業を受ける気にもなれない。サボろっかなぁ・・・天気もいいし。


「いいや、仁王もう先に行きなよ。」
「お前さんサボるつもりか?」
「いっつもサボってる人に言われたくないよ」


しかもわたしにサボりたくなる気持ちを作った張本人め。
仁王のことをちょっと睨むと、仁王は眉間に皺を寄せて首を傾げた。


「ほんなら俺も。」
「・・・え。何でよ!?」
「おっと。ここは見つかるのう・・・。天気もええことじゃ屋上行くぜよ」
「ちょっとちょっとちょっとちょっと!!!」


ぐいぐい引っ張られて屋上まで・・・。
もう随分肌寒くなってきたなぁ。太陽は眩しいのに風が冷たい。仁王も「寒・・・」と呟いた。


「そこ座りんしゃい。」
「うん?ここ?」
「そうじゃ。」


クエスチョンマークを浮かべながら正座すると、仁王はわたしの太ももを枕にして寝始めた・・・!!


「ちょっ・・・!え!?仁王!!」
「だまりんしゃい。おっの手温いのぉ」


わたしの手をカイロのように扱う。確かにわたし体温高いけどさ・・・!
本当なに考えてるのか意味分かんない!!年上の彼女いるくせにこういうことする!?
あー・・・もう。・・・・・・ちょっと嬉しい自分が悔しい。ばか、わたしのばか。


「誰にでもこういうことやっちゃ駄目だよ、仁王。」
「ん?お前さんにしか頼んどらん。」


うつらうつらとなってる仁王を見て気持が複雑になる。
ずっとこうしていたい気持もあるけど、仁王には彼女がいるんだ。
わたしが仁王の彼女の立場だったらこんな光景絶対許せないし、嫌だ。


「彼女が可哀想だから、ね。」
「は・・・?勘違いしとらんか?俺、彼女、おらん」
「えっ・・・ええええええええええ!!!???!?


思わず驚きすぎて立ち上がってしまった。
その拍子に仁王は床に頭を打ち付けてしまったらしくて辛そうな顔してる。


「・・・何するんじゃお前さん」
「ほっ・・・本当に彼女いないの!!?」
「おらん言うとるじゃろ。ほう・・・今日ののパンツは白か。」


いつもなら一発殴るようなセクハラ発言も今は全然気にならない。
仁王に彼女がいないって・・・!?


「だ、だって!昨日駅で年上の綺麗な女の人と歩いてたって・・・!!噂になってたよ!?」
「昨日ー・・・?あぁ、あれは姉貴じゃ。買い物に付き合わされた挙句、荷物持ちぜよ」
「そ・・・そうだったんだ!」


どうしよう!!嬉しくて飛び上がる勢い・・・!
そっかぁ。お姉さんかぁ。・・・確かに、仁王のお姉さんってきっと綺麗な人なんだろうなぁ。
仁王の彼女に間違えられてもおかしくないかもしれない。


「ほんで・・・なんで俺に彼女がおらんくてそんなに喜んでるんかのう」


ニヤッと口角が上がった仁王の不敵な笑み。
自分でも一気に顔に熱が集中するのが分かった。

ネクタイをぐいっと引っ張られて気づいたら目の前には仁王の顔。


「頭打ったお返しじゃ。」


わたしは体の力が一気に抜けて、仁王に倒れこむ。
どうやら、わたしは彼のペテンにかけられたみたい。







(20131002)