「お。」
「わっ!?」

「・・・誰っすか?」









コンビニで買い物を済ませて出ようとしたらバッタリ仁王と会った。
たぶん、一緒にいるのテニス部の後輩だな。意外と仁王って面倒見良いんだなぁ。


「じゃあね、仁王」
「待て。それじゃあな赤也」
「ちょっとちょっと!仁王先輩!!なんでっすか!!」
「お前さんのジャンプ立ち読みに付き合うよりこっちの方が面白そうじゃ」

「え?え??」

「行くぜよ」
「え?ちょっと、え?後輩置いてってるけどいいの?」
「構わん」


私の持っていたコンビニ袋をさり気なく奪い、中身を物色し始めた。


「なんじゃ、これ」
「ちょ!ち、違うの!!ある実験の検証をね!」
「実験・・・?」


仁王が眉間に皺を寄せてコンビニ袋を見るのも分かる。
そう、中身は全て「肉まん」や「チョコまん」「ピザまん」・・・などなど。
先ほどのコンビニに売っていた全種類を大人買いしたのである。


「どこのコンビニのどの味が一番美味しいか、っていう実験なんだけど・・・」
「・・・へぇ。一人でやっちょるんか?」
「まさか!わたしの担当がさっきのコンビニだったの」
「ほう。」
「・・・一緒に食べる?」
「ちょうど腹が減ってきたところじゃ」


少し歩いた先の公園のベンチで食べることにした。
仁王の意見も参考になるだろうし、どの味が一番美味しかったか聞いてみよっと。


「仁王は普段どの味にする?」
「オーソドックスに肉まん」
「へぇ。冒険しないタイプ?」
「チョコまんなんてあったんか」
「男子って買わないよねー。美味しいのに!」


2人で黙々と食べる。私は味の感想を携帯にメモしていく。分かる範囲で具材だったり、生地だけの味とか。


「他のコンビニとそんなに味が違うんか?」
「それを今回検証するの!」
「全部のコンビニで食べ比べせんと分からんじゃろ。人の味覚なんて全員が同じわけじゃない」
「・・・確かに」


女子の間で話が盛り上がっちゃって誰もそのことに気づかなかった。
冷静に仁王がツッコんでくれるまで私も気づかなかった。誰からも連絡がきてないからまだ他の皆は気づいてないのかも。


「なーんか馬鹿らしくなってきちゃった。んー!やっぱりチョコまん美味しいなぁ」
「ごちそうさん」
「あ、ちなみにさー・・・」


今食べた中でどの味が一番好き?って聞こうとしたら、仁王の顔が突然近づいてきた。
私の唇の端っこをキスするかのように舐める。


の唇についてたチョコ、が一番」


そう言って仁王は立ち上がる。「じゃあの」と声をかけられたけど、思考停止。
なんで私の質問分かったの?・・・・・・ちがうちがう!好きでもない子にそうやって思わせぶりな態度とるの?


「ま、待って!仁王!!」


仁王に駆け寄るわたしの足取りはスキップをしてるかのように軽かった。



聞きたいことが、たくさんあるの。




(20131204)