は眩しいな」
「え?」


振り向くと、太陽の光を背負った幸村くん。
その笑顔の方が、よっぽど眩しい。


「嫌味っぽいよ、もう。そんなに輝いてる人に言われてもね」
はお世辞が上手いね」
「本当なのに・・・」
「そんなに俺が輝いて見えるの?」


ぐっと顔を近付けてくる幸村くん。
本当に綺麗な顔してる。わたしはどこを見ていいのかわからないまま、こくりと頷いた。


「う、うん」
「俺の事好きなんじゃないの?」
「な、何言って・・・!」
「やだな、冗談だよ」


どこに行くのか、立ち上がって背中を向けたまま幸村くんはぽつりと言う。


「でも本当だったら・・・嬉しいんだけどね」


幸村くんは、よくわからない。
熱くなる頬を抑えて、わたしは悩んだ。













あーあ、嫌なところに立ち会ってしまった・・・。
壁に背中を預けて、ずるりと座り込んだ。
今、壁の向こうで幸村くんが女の子に告白を受けてる。


「ごめんね」


あ、フラれた・・・。
ずっ、と女の子が鼻を啜る音が聞こえる。
ちらりと覗いてみると、幸村くんは困ったような顔でその子を見下ろしていた。


「俺、好きな子がいるんだ。だからダメ。ごめんね」


女の子は小さく「わかった」と呟いて、走って行った。
わたしの横をすり抜けて行ったから、すごく驚いたけれど・・・よっぽどショックだったんだろう。
わたしの存在に気付く事もなかった。
・・・わたしは、幸村くんにあんなお世辞を言ってもらえるだけ良い方なのかもしれないなぁ。
それにしても幸村くんに好きな子がいたなんて。正直、ショックを隠しきれないよ・・・。


って悪趣味だね」
「!?」
「覗きか・・・よっぽど俺の事が好きと見たよ」
「や、やだ、違うの!偶然!」


焦るわたしの前に、幸村くんは座り込んでにっこりと笑っていた。
その笑顔が怖い・・・と思っていると、案の定、幸村くんはわたしの顔の横の壁にバン!と手を付いた。


「きゃ・・・!」
「ねえ・・・何か思わないの?」
「な、何かって・・・?の、覗いた事は謝るよ!」
「あ。否定しなかった。やっぱり覗いてたんだ」
「そうじゃないけど・・・」


見上げると、今度はどこか恐ろしく見える笑顔を貼り付けた幸村くん。
そんな表情のまま、いつものトーンで「何?」と言うから、余計怖い。


「それはいいんだ、それより何か思わないの?」
「ゆ、幸村くんって好きな子がいたんだなー・・・とか?」
「俺が聞いてるんだ」
「・・・ごめんなさい」


そんなに怒るなんて、思ってもみなかった。
わたしは耐え切れなくてぎゅっと目を瞑った。その拍子に目じりからぽろりと涙が零れる。


「フフ・・・泣いちゃったの?こわかった?」
「・・・幸村くん、怒らないで。わたし、悪気があったわけじゃないの・・・」
「わかってるよ。可愛いな、


優しく頭を撫でる手つき。
でもそれに反して幸村くんは怖い顔をしているんじゃないか、とか考えると顔を上げられなかった。


「好きな子がいるなんてショック、とかないの?」
「・・・べ、別に」
「可愛くないな」


さっきと違うじゃない!
慌てて顔を上げると、幸村くんはやっぱり黒い笑みを浮かべていて、また涙が勝手に出てくる。


「泣くなよ。俺の好きな子、誰か気になるだろ?」
「き・・・気にならないよ・・・聞きたくない・・・」
「どうして?」
「知らないっ」
「ショックなんだろ、俺に好きな子がいて」


幸村くんって傲慢だ!しかも人の気持ち、全然考えないし!
キッと視線を上げても、幸村くんはからかうように「泣き顔、可愛いよ」と笑うだけだった。


「バカじゃないの・・・!」
「というか、そそるね。の泣き顔」
「女ったらし!」
「やだな。好きな子にしか言ってないから、別にたらしじゃないよ」
「・・・え?」
「はぁ・・・鈍いね、


顔を上げると、すぐに幸村くんの腕がわたしの体を抱きすくめた。
力強く唇を押し付けられて、わたしは驚いたまま抵抗も出来なかった。
おまけ程度に首筋にまで軽くキスを落とされ、わたしは放心状態から抜け出せない。


の事、好きなんだ俺」


そう笑う幸村くんの笑顔が、やっぱり眩しくて。
まるで、


「ひまわりみたい・・・」


ぽつりと呟いて、笑ってしまう。
なんていう遠回りをしていたんだろう。泣いていたのがバカみたい。


「俺も同じ事考えてた。、俺の事好きだろ?」


その傲慢な態度すら、幸村くんの気持ちがわかった今では眩しい。
わたしは、笑顔のまま頷く事ができる。








(20120305)Happy birthday!